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滯英日記 >> ウィットビー

ウィットビー Witby

バスはノース・ヨーク・ムーアズ国立公園をつっきってウィットビーまで続く道をひた走る。
海岸線から少し引っ込んだ所を走るので海はあまり見えなかったが、ムーアの風景は存分に楽しむことができた。
見ると茶色っぽい潅木の茂みがところどころ紫色に染まっている。あれはヒースではないか。ヒースの盛りは8月と聞いて諦めていたのだが、この調子だとハワースにも少しは花が残っているかもしれない。期待で胸が躍る。

ロビン・フッズ・ベイを経由するこのルートは地元では人気の観光地と見えて、道筋にはB&Bやゲストハウスが立ち並び、トレッキング姿の人がたくさん歩いている。

やがてはるかムーアの向こう、海に面してウィットビーの廃墟が見えてくる。
バスはゆっくりと大回りしてウィットビーの鉄道駅前に止まった。

 

ケーキ店「マリー・アントワネット」

 ジェットの専門店

カモメの声を聞きながら橋を渡り、修道院へ続く道を行く。丘の下の通りは観光客でごった返していた。
ティールームやお土産物屋に混ざってアクセサリーショップも目に付く。ウィットビーは良質のジェットの産地として知られ、アルバート公を亡くした後のヴィクトリア女王が愛用していたことから、未亡人たちの間でウィットビー・ジェットが大流行した。当時、未亡人の服装には厳しい決まりがあり、ジェットは彼女たちが身につけることのできる数少ないアクセサリーの一つだった。ウィットビーのジェット鉱山はずいぶん前に閉山したはずなので、現在売られているのは別の地域で産出されたものだろう。


■聖メアリ教会 St.Mary's Church


199段の階段を上がると聖メアリ教会の前に出る。ブラム・ストーカーがドラキュラの着想を得た場所がここだそうで、確かに海に面した丘に無数の墓石が並ぶ光景はちょっとしたものだが、教会自体はごく平凡なものである。内部の信者席がコンパートメントみたいなボックス席になっているのはおもしろい。




■ウィットビー修道院 Whitby Abbey

ウィットビー修道院は657年、ノーサンブリアの王女聖ヒルダによって設立されたと言われる。13世紀にはゴシック様式の壮大な聖堂が建てられ繁栄を誇ったが、ヘンリー8世の宗教改革によってあえなく滅びた。
付属の博物館で展示を見ながら二階に進むと、修道院の中庭につづくドアがある。


芝の上に屹立する太い柱を回り、ここにかつてはステンドグラスがはまっていたのだろうか、とかこの柱とあの屋根がこうつながっていて、などと想像する。見あげると崩れ落ちた屋根の間から空が覗く。

 
   


 

第二次大戦中には砲台と間違われてドイツ軍に空爆されるという不遇にも見舞われたそうだが、それでもなお美しい廃墟である。

修道院付属のティールームで一休み。外にトレイを持ち出して海を眺めながらお茶を飲む。ヴィクトリア・スポンジケーキは素朴で飾り気はないけれど美味しかった。
すぐ隣でラベンダーの茂みがいい香りを放ち、マルハナバチが群がっている。スズメがケーキのくずを食べに来る。あまりにものどかな休日で、ずっとこんな日が続けばいいのにと思う。しかし帰る場所があるからこそのモラトリアムなのだろう。

15時40分発のバスに乗ってスカーバラへ戻る。へんてこなものばかり収集しているというウィットビー博物館にも行きたかったが、ホテルに置き去りにした荷物が心配なので諦めた。



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