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滯英日記 >> ハワース(2)

■ブロンテ博物館 Brontë Parsonage Museum

墓地のすぐ目の前にはブロンテ一家が住んだ牧師館が残っており、ブロンテ博物館として公開されている。
それほど広い家ではない。観光客でにぎわっていたこともあり、見学者同士、すれ違うのに苦労するほどであった。労働者階級の住居に比べたら立派なものなのだろうが、全体としては慎ましやかな印象を受けた。
内部はブロンテ一家の時代から改装を繰り返しているため、当時のままというわけではないが、家具や日用品などはほとんどが一家が実際に使用していたものだという。

入ってすぐ右手にパトリックの書斎がある。ピアノはアンが弾いていたものだという。
その向かいの食堂はアンのお気に入りのロッキングチェアや、エミリがその上で亡くなったというソファがある。
エミリは兄ブランウェルの葬儀で体調を崩し、その四ヶ月後に死去するのだが、病状が悪化して立って歩くのが困難なほどになっても頑として医者にかからず、死の直前まで普段どおりの生活をしようとしたという。変わり者で頑固だったといわれるエミリの性格を表すエピソードのひとつであるが、シャーロットはエミリが自分の部屋のベッドで亡くなったと回想しているので、このソファにまつわる物語も伝説にすぎないのかもしれない。

階段を上がると子供たちや女中の寝室がある。
シャーロットの寝室には彼女のドレスや日用品がたくさん展示されていた。家族の中でもシャーロットゆかりのものが多いのは、彼女が姉妹の中で唯一、生前から名声を勝ち得たためだろう。
シャーロットが牧師補のアーサー・ベル・ニコルズと遅い結婚をした後、生まれてくる子供のために編まれた帽子もある。しかし、シャーロットは38歳でお腹の子と一緒に亡くなり、この帽子が使われることもなかった。

ブランウェル・ブロンテによるブロンテ姉妹の肖像
(左からアン、エミリ、シャーロット)


子供部屋、のちにエミリの部屋として使われた部屋は非常に狭く、窓からは教会の墓地が間近に望めた。
ブロンテ姉妹が生きていた頃のハワースは今以上に辺鄙な田舎町で、厳しい気候とインフラの乏しさから、41パーセントの子供が6歳になる前に亡くなったそうだ。当時の写真を見ると、町並み自体は現在と変わらないのだが、店らしい店も見られず、今のメインストリートの賑わいからは想像もつかないようなさびれようである。
死がつねに身近にあったこの時代、エミリは毎日のように行われる埋葬を見て育った。このことが『嵐が丘』の構想に大きな影響を与えたのではないかと言われているそうだ。

エミリのみならず、他の子供たちにとっても、この部屋は文学修行の原点であった。
ブロンテ家の子供たちは近所の子供たちとはあまり交わらず、いつも姉弟で遊んでいたという。
遊ぶときはシャーロットとブランウェル、エミリとアンという組み合わせになることが多かったようだ。
彼らはやがて演劇や物語作りに熱を上げるようになる。
娯楽が少ない環境で育った彼らにとって、それはある意味自然ななりゆきであっただろう。
なかでも父パトリックがお土産として買ってきた兵隊の人形から空想を膨らませ、長大な物語を作ったことはよく知られている。
この頃彼らが書き残した原稿が展示されていた。小さな紙切れに、虫眼鏡で見なければ判読できないような小さな文字で書かれている。

出口近くには姉妹の父であり、84歳で亡くなるまでこの牧師館で暮らしたパトリックに関する展示があった。
パトリック・ブロンテが1820年にこの牧師館に移り住んだとき、彼には妻マリアと6人の子供があった。しかし着任早々に妻マリアを失ったのを皮切りに、長女マリア、次女エリザベス、長男ブランウェル、四女エミリ、五女アン、そして最後には三女シャーロットと、そのすべてに先立たれることになった。この家にはパトリックの悲しみが染み付いている。

建物の外に出ると、こぢんまりした庭が広がっている。
かつて牧師館の庭と教会の墓地とをつなぐ門があった場所にメモリアルが置かれていた。ブロンテ家の人々は、日々この門を通って教会へ通った。人生の最後に墓地へ葬られる時も。


■日曜学校 Church Sunday School

教会と牧師館の間に建っているのがシャーロットが教師として勤めた日曜学校。現在はブロンテ関係の講演やワークショップが開催されているようだ。

メインストリートの前まで戻ると、ブランウェルが阿片などを購入していたという薬局が教会の斜向かいに残っている。
今も薬局だがオーナーが変わったようで、Rose & Co. Apothecaryという店になっている。レトロなパッケージの石鹸やバスソルト、バームなどが観光客に人気を博していた。
そうこうしている間にまた雨が降り始めたので、薬局の隣のApothecary Tearoomでクリームティーをいただきつつやり過ごすことにする。 狭い店内は雨を避ける観光客でごった返しており、気さくな店主が忙しく立ち働いていた。




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