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滯英日記 >> ハワース(3)

■ムーアへ

 

雨はまだ降り続いていたが、ムーアへの憧れを押さえることができず、入り口まで行ってみることにした。
牧師館の裏手からムーアに向かって小道が延びている。ブロンテ姉妹もかつて通った道だ。
両側は牧場になっていて、鶏や羊が放し飼いにされていた。ひつじの不審げな視線を感じながら歩く。道の両側に積まれている石は少なくとも18世紀までさかのぼるとのことで、苔むしている。

小道を進むにつれて心ははやり、自然と早足になる。
そして目の前にペニストン・ヒルが開けた、そのときふいに雨がやんだ。

地面に目を落とすと、わずかながらヒースの花が残っている。

ヒースはエミリがこよなく愛した花だった。
エミリの死期が近づいた時、シャーロットは妹のためにヒースの花を探して荒野をさまよい歩いたが、どうしても見つけることはできなかったという。
エミリが亡くなったのは12月なので無理もない話なのだが、それでも荒野に来ずにはいられなかったシャーロットの気持ちを思った。

犬の散歩をする人たちと挨拶を交わしながら、ペニストン・ヒルの中ほどに歩み入る。
道端にブロンテ姉妹を記念する本の形のオブジェが置かれていた。


本のオブジェ


ペニストン・ヒルの中心まで行き着く前に雨が強くなってきたので、残念ながら引き返すことにする。ここはまだムーアの入り口にすぎない。明日はなんとか天気が回復して、本格的なムーア探索ができることを願うしかない。


B&B The Old Registry

B&Bに戻ってチェックインを済ませる。通されたのはPear Roomと名づけられた部屋で、屋根裏風の素朴なつくりに紫系で統一されたインテリアが愛らしい(写真だと圧迫感があるが、実際には狭さを感じさせない居心地の良い部屋だった)。若い女主人の心遣いなのか、備え付けのアメニティやティーバッグなども気が利いている。

お茶を飲みながら一息ついていると、天窓からまた虹が見えた。天気がめまぐるしく変わる土地だからこそ、あんな美しい七色の虹が頻繁に見られるのだろう。

18時すぎに夕食を取るため外に出て行くと、メインストリートは閑散としてほとんど人がいない。観光客は日帰り客が多かったのか、それとも宿にひっこんでしまったのだろうか。雨はやんでいたが、空気は冷たく吐く息が白い。
老舗のレストランOld White Lionでヨークシャープディングとラガーを頼む。まずいまずいといわれている英国料理だが、これは美味しくて、ボリュームがあったにも関わらずぺろりと食べてしまった。給仕の女の子もかわいくて親切で満足。

うすうす感じてはいたが英国は大陸の国々に比べると夕食の時間が早いようで、19時過ぎに店を出るときには他の客はほとんど引き払っていた。大陸人の夕食の遅さに閉口していた身にはありがたいことである。




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