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東方への旅 >> ベルリン(1)

2009.11.17(火)

ベルリン Berlin


ハンブルク中央駅


また5時前に目が覚めてしまった。
ルームカードの裏に書かれていた地図を参考に駅まで歩くと、あっさり到着した。昨夜は大きな通りを通ってこようとしたのが間違いだったようだ。
すっかりおなじみになった券売機で乗り換えルートと時間を調べる。8:06初のICE705でBerlin-Spandauへ。そこからRE38137に乗り換えてBerlin Zoologischer Garten。所要時間は1時間51分。
ICEの中でうつらうつらする。「電車で寝るのは日本人だけ。西洋人は眠っている無防備な顔を決して他人に見せない」と昔何かで読んだ覚えがあるけれど、寝ているドイツ人はけっこう珍しくなかった。
Berlin Zoologischer Gartenで下車。宿泊予定のHotel Boulevardはカイザー・ヴィルヘルム教会の目と鼻の先にあった。このあたりは旧西独ではもっともスノッブな地域だったんだそうな。
6階建ての建物で2階から5階が客室、レセプションは最上階にあるので、チェックインするにはまず上まで上がらなければならない。エレベーターを待ちながらふと見ると、


シンドラーのリフトだった。

幸いすぐにチェックインできて、意気揚々と部屋に行ったはいいが、ドアについていたのは今時珍しい鍵穴式のキー。開けるのにコツがいるらしく、どうしても開かない。10分ほど格闘したのちにフロントに助けを求めるはめになった。
お姉さんに解錠の方法を教えてもらって、やっと部屋に入ることができた。ツインのシングルユースなので部屋は広い。しかし枕もとの照明が切れていたりテレビがつかなかったりと色々いい加減。全体的に設備が古いのだ。とはいえ、この立地でこの値段なら文句を言うべきではないだろう。

■カイザー・ヴィルヘルム教会 Kaiser-Wilhelm-Gedächtnis-Kirche

まずリヒテンブルク駅に行ってクラクフ行きの夜行のチケットを予約しなければならない。が、その前にカイザー・ヴィルヘルム教会に寄り道。空襲で爆撃された教会をそのまま保存している。塔の足元ではクリスマスマーケットの準備が進行中であった。
内部は展示スペースになっていて、過去の写真や元の教会にあったイエス像などが置かれている。ガイドブックの紹介を読んで原爆ドームみたいなのかなと思っていたけど、実際に見てみるとちょっと違う。浦上天主堂が修復されずに保存されていたらこんな感じだろう、と思った。

 

「ほら、戦争中の写真よ」
パネルを眺めていると、後ろから日本語の会話が聞こえた。今回の旅行で初めて遭遇した日本人である。やはりこんな中途半端な時期に旅行する日本人は少ないのだろうか。対照的にどこに行っても見かけるのが中国人観光客で、中国が好景気というのは本当らしいと実感する。
廃墟となった教会の隣に新しく建設された礼拝堂を見学する。青いステンドグラスが印象的なモダンな建物だ。



■リヒテンベルク駅へ

ツォー駅から中央駅を経由して東へ向かうSバーンは高架になっていて、しかも市内をぐるりと一周するので、観光客にとっては楽しい路線である。線路の上から見下ろすベルリンはパリなど他のヨーロッパの都市に比べると新しい建築が目に付き、それらが東京ほど密集していないので、なんだか妙に見晴らしが良い。日本にやってきた西洋人たちが「東京は未来都市のようだ」というけれど、その比喩はベルリンにこそふさわしいと私は思う。どことなく無機質で現実味がないのである。さびしげな印象は人口が少ないせいもあるかもしれない。

旧東独に属するリヒテンベルクは古びて薄暗い駅だった。ロシア、ポーランドなど東側への玄関口である。
列車を降りて窓口に直行する。DBの係員さんはきっと英語が喋れるだろうが、万が一の間違いがないとも限らないので、口頭ではなくプリントアウトした時刻表を出して見せる方法を取った。11月19日21:04発クラクフ行きの個室寝台。運賃は167.20ユーロ。
個室にしたのは安全上の理由もあるが、何より見知らぬ他人と同室で眠るのに耐えられないからだ。貧乏人のくせにユースホステルに泊まったことがないのはこのためである。いろいろな人に「ユース発祥の地だけあってドイツのユースはいいよ、一度泊まってみなよ」と勧められるのだが、やっぱり気が進まない。

■イーストサイドギャラリー East Side Gallery


無事チケットも取れたのでベルリン観光を開始する。
まずはオストバーンホフで降りてイーストサイドギャラリーを見学。ベルリンの壁を保存して、その上に内外のアーティストが絵を描いているのだが、正直芸術作品としてのよしあしはよく分からない。
壁の写真を撮っているとまた雨が降ってきた。手早く切り上げてアレクサンダー・プラッツへ向かう。
オストバーンホフは新しい大きな駅で、ひととおりの店が駅の中にそろっていた。

■マリエン教会 Marienkirche

アレクサンダー・プラッツ駅を降りると目の前にテレビ塔の根っこの部分が見えた。上へ昇れるそうだが、こういうものは下から見るもんだろうと思い、ブランデンブルク門の方角へ歩き出した。
いまいましいことに雨がどんどん強くなってくる。
このあたりは観光客が多く、みんな地図を広げたり、写真を撮りながら歩いていく。


通りすがりにマリエン教会があった。『舞姫』で主人公の太田豊太郎とエリスが出会った「クロステル巷の古寺」がここだという。ふらっと入ってみるとルネサンス絵画がたくさんある。壁に古い絵(フレスコだろうか)が残っているのをガラスごしに見学した。描かれているのはダンス・マカーブル。壁画はかなり薄れていて判別が難しいが、前のショーケースにイラスト(紙に起こしたもの)が置かれている。王も王女も騎士も僧侶も、みんな骸骨と手をとって踊っている。



■マルクス・エンゲルス像

赤の市庁舎を横目に見ながらずんずん歩いていくと、小さな広場のようなスペースがあり、マルクスとエンゲルスの像が立っていた。のっぺりとして生気のない像である。二人の視線の先には赤の市庁舎とテレビ塔がある。
広場には他にも旧東独時代の遺物らしきオブジェがいくつか置かれていった。マルクス・エンゲルスの背後にある人民芸術風味の彫刻の前で、女の子二人組に写真撮影を頼まれた。ソニーのデジカメを受け取って写真を撮り、「これでいいかな?」と画像を示すと「Perfect!」と嬉しそうに笑う。


哀愁ただよう背中



■ベルリン大聖堂 Berliner Dom

シュプレー川を渡り、巨大なベルリン大聖堂の横を通り抜ける。青銅色のドームがひときわ印象的な、ホーエンツォレルン家の霊廟だ。建築史のことはよく分からないが、漠然と19世紀的な外観だと思う。ドイツ帝国は若い国だ。
内部は見学せず先を急ぐ。

■焚書のモニュメント

国立歌劇場前のベーベル広場は1933年5月11日にナチスによる焚書が行われた場所である。マルクスなど共産主義者の著作のほか、ハインリヒ・ハイネ、トーマス・マン、ハインリヒ・マン、エーリッヒ・ケストナー、シュテファン・ツヴァイクなど、ドイツ語文学の精華とも言うべき作品が「ドイツ的でない」という理由で焼かれた。文学部で学んだ者として、出版業界の末端に身を置く者として、そして何よりも一読書人として、深く心に刻まなければならない出来事だ。二度とこのようなことを許してはならない。すでに100年以上前にハイネは予言していた。「本が焼かれるところでは、やがて人間も焼かれることになるだろう」



広場の中央あたりにひっそりと焚書のモニュメントがある。石畳の一角が切り取られ、透明のガラスを通して中が覗き込めるようになっている。地下にあるのは真っ白い空っぽの書架だ。知らなければ気づかずに通り過ぎてしまうようなさりげない展示だが、雨の中、何人かの人が立ち止まって見下ろしていた。

■ウンター・デン・リンデン Unter den Linden

菩提樹下と訳するときは、幽静なる境なるべく思はるれど、この大道髪の如きウンテル、デン、リンデンに来て両辺なる石だゝみの人道を行く隊々の士女を見よ。胸張り肩聳えたる士官の、まだ維廉(ヰルヘルム)一世の街に臨める窓に倚り玉ふ頃なりければ、様々の色に飾り成したる礼装をなしたる、妍き少女の巴里まねびの粧したる、彼も此も目を驚かさぬはなきに、車道の土瀝青の上を音もせで走るいろいろの馬車、雲に聳ゆる楼閣の少しとぎれたる処には、晴れたる空に夕立の音を聞かせて漲り落つる噴井の水、遠く望めばブランデンブルク門を隔てゝ緑樹枝をさし交はしたる中より、半天に浮び出でたる凱旋塔の神女の像、この許多の景物目睫の間に聚まりたれば、始めてこゝに来しものゝ応接に遑なきも宜なり。
 森鴎外『舞姫』

と、ウンター・デン・リンデンがいかにイケてるスポットであるか森鴎外は力説していたが、いま私が目の前にしているのは、古くも新しくもない四角い建物が立ち並ぶ素っ気無い通りである。東京で言うなら丸の内の、メインストリートからちょっと外れたあたりに似ている。
鴎外が留学していた頃はパリのシャンゼリゼに比肩するような華やかで堂々たる通りだったのだろうが、大戦で建造物の多くは破壊され、さらに東西分断で東ドイツ側に組み込まれたために、こんな寂しい有様になったようだ。これでも壁崩壊直後に比べるとだいぶ賑やかにはなっているみたいだが。
ようやく目についたカフェに入ってアプリコットタルトとコーヒーを注文する。最初はガラガラだったのが、雨を避ける人々がぞくぞくやってきて満席に近くなった。
ユダヤ人犠牲博物館とテロのトポグラフィーを見るつもりだったが、雨の中屋外展示を見るのも億劫になり計画変更。絵画館に行くことにする。


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