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東方への旅 >> ベルリン(2)

■ポツダム広場


レゴランドもあります

Sバーンに乗ってPotsdamer Platzに降り立った。駅で路線図を広げた人に乗り換えについて訪ねられたが当然答えられず。
階段を上がって外に出ると真新しいビル群が目に飛びこんでくる。ミッドタウンとかヒルズ周辺みたいな雰囲気、いやもっと未来的だ。中でもひときわ目立つのがソニー・センターとDBの本社ビル。
ポツダム広場は戦前は賑やかな地区だったが、第二次大戦中に連合軍による空襲で壊滅的な被害を受け、さらに戦後になって東西に分断されたために、ベルリンの辺境となってしまった。『ベルリン・天使の歌』に出て来るのはこの頃のポツダム広場だ。壁崩壊後、荒れ地となっていたポツダム広場の再開発が始まり現在に至る。
パリ近郊のラ・デファンスなど、再開発によって現代的な景観を持つに至った地区は他にもあるが、ポツダム広場の背負った歴史は複雑で特異なものだ。何も知らなくても美しい広場だが、その数奇な運命をふまえて今の光景を見ると、また違った表情が見られように思う。

■絵画館

絵画館はポツダム広場から歩いて15分ほどの所にある。
まずは荷物をロッカーに預けるため、地下へ。硬貨を切らしていたので係の人に両替できないか聞いてみると、専用コインを貸してくれた。

絵画館内部は50以上の展示室に分かれている。順当に中世絵画から始まり、時代を下っていく。北方ルネサンスの部屋に入った瞬間、胸が高鳴った。興奮で目が滑るのを抑えて一点一点鑑賞する。(この時の私は完全に旅行の趣旨を忘れていた。)

膨大な収蔵品の中でも特に印象深いのはやはりペトルス・クリストゥスの「若い女の肖像」だろう。澁澤龍彦もこの絵をこよなく愛した。

彼女の剃り落とした眉毛の下の、二つのアメンドウのように細長い目は、東洋風というより、むしろ支那風といった方がよいくらいであろう。謎のような目といえば、私たちはすぐレオナルドの「モナ・リザ」を思い出すが、この少女の眼も、それに劣らず、謎のような魅力的な光をたたえているようには見えないだろうか。
 澁澤龍彦『幻想の肖像』(河出文庫)pp.13-14

15世紀後半の作だが不思議に現代的な趣きがあり、フェルメールにも通じるような静謐さを漂わせている。モデルはシャルル突進公の妃イザベル・ド・ブルボンだとする説もあるという。

ヤン・ファン・アイクの「教会の聖母」、ブリューゲルの「ネーデルラントの諺」、クラナッハによるボッシュの模写なども面白い。
うれしいことに展示室はがら空きで、好きな絵の前に長時間陣取って思う存分鑑賞することができる。


メカっぽくてかっこいい骸骨氏

 


気のいい兄ちゃん風の天使(ファン・デル・ウェイデン)



クラナッハのウェヌスとクピド


肖像画のコーナーにて、「あらこの人上手」と思って名前を見たらホルバインだった。また別の部屋で「この人もさっきの人とはまた違った感じで上手」と思ったらデューラーだった。上手いはずだ。
彼らに比べると、クラナッハは肖像画家としては今ひとつだと思う。誰を描いても同じクラナッハ顔なので、後世の人間としては、画家が本当にモデルの姿を忠実に描き出しているのか、疑問を抱かざるを得ない。
それでも女性像はやはりすばらしく、これまた澁澤好みのウェヌスとクピドの絵はさすがの出来栄えである。

バロック以降はあまり好みの絵がなかったのでざっと流して見たが、例外的に「あ、この人は好き」と思った絵があり、作者を見たらレンブラントだった。

じっくり見たわけでもないのに、すべての部屋を回り終えた時は二時間以上が経過していた。足は棒のようだが精神的には見たされて幸福だ。ここ数年、上野の人混みにうんざりしてすっかり美術館嫌いになっていたが、やっぱり自分は絵を見るのが好きなのだと思った。

せっかくの共通券なので、欲を出して工芸美術館(同じ建物内にある)にも立ち寄る。キンキラキンの聖遺物箱が腐るほどあった。陶磁器コレクションの中にはわが国の柿右衛門も。


絵画館外観


外に出るとすっかり日が暮れていた。
細い雨の降る中を歩いて駅に向かう。途中、立ち止まって夜景の写真をとっていたらまた道を聞かれた。首からカメラを下げたどこからどう見ても観光客の風体で「申し訳ないが私はこのへんの者じゃないので」と謝る。


夜のポツダム広場


Sバーンでは、チーマー風のお兄さんに連れられた大きな犬と一緒になった。おりこうに座っている。その横にはいかにもライヒのアーリア人といった感じの金髪長身の美青年。
幼い姉弟がお母さんと一緒に乗り込んできてはしゃいでいる。犬のほうがおとなしいくらいだが、二人とも顔が天使のように愛らしいのでうるさいと思うより先に見とれてしまう。金髪美青年も子供を見て目を細めている。

ツォー駅の周りは日が暮れてもなお賑やかだった。楠本まきのエッセイまんが『耽美生活百科』にツォー駅の周りはジャンキーのたまり場であると書かれていたのを読み恐れていたのだが、健全な雰囲気である。まだ時間が早いからだろうか。もっともあのエッセイが書かれたのは96年のことなので、事情が変わっていてもおかしくない。
駅周辺を探検する。スーパーがあればと思ったのだがあいにく見つからない。路上の売店でパンと飲み物を買って帰った。


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