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東方への旅 >> ラーフェンスブリュック強制収容所(2)

■収容所跡地


公式サイト

ラーフェンスブリュック強制収容所は1939年に女性用の収容所として建設された。ユダヤ人やシンティ、ロマだけでなく、共産主義者や政治犯として逮捕されたドイツ人女性も収容されていた。ザクセンハウゼンなどには囚人用の売春施設があったが、「売春婦」役の女囚はここラーフェンスブリュックから選び出されたと言われている。

敷地内には作業場やクレマトリウムなどが残っているが、傷みが激しいこともあり、公開されているのはごく一部。戦後、この地域は東ドイツに属していたため、ソ連軍に利用されていた時期もあるようだ。

■女性キャンプ

かつてバラックが立ち並んでいた所には砂利が敷き詰められ、その上に枯葉が積もっていた。ところどころに「懲罰ブロック」「病人ブロック」「ユダヤ人ブロック」など、案内板がたてられている。

■男性キャンプ

女性専用の収容所としてスタートしたラーフェンスブリュックだったが、1941年以降は男性キャンプも併設された。跡地には柵があって近づけなかったが、建築物は何も残っていない。草が生い茂った中にかろうじて基礎のようなものが見えた。

■工業団地

 

地図には「Industrial estate」とあるのだがしっくり来る訳が思いつかない。要は作業所の集合体であろう。
収容者たちは、主に洗濯や裁縫など、伝統的に「女性の仕事」とされた作業に従事させられた。ここでは囚人服やSSの制服を作る作業も行われていたそうだ。

風が強くておそろしく寒い。ダウンコートを着て、マフラーと手袋をしていて、それでも身を切られるように感じる。
薄い囚人服だけを身にまとった収容者たちはこの寒さをどうやって耐えていたのだろうか。ある収容者は、この地の気候の厳しさを回想し、以下のように語っている。

髪を剃り落とされ、裸同然のわたしたちが幾日も外で過ごさねばならない時、身を守る手段は皆無である。骨の髄まで凍りつくと、しびれやこごえの段階を通り越して、刺すような、しつこい苦痛の段階に達する。冬はあまりに長く、終りがないように思えてくる。バルト海への近さがわたしたちの惨めな生活条件をさらに劣悪なものにする。雪と氷がしばし緩むかと思うと、風が激しく吹きつけて、ブロックの周囲をめぐり、所内の小道を吹き抜け、わたしたちの薄い服を貫き、足元を危うくさせる。滝のような雨に見舞われることもある。雨水は、服の下、じかに体を伝って流れる。わたしたちはその濡れた服を一日中身につけ、乾かす手段もないまま、翌日、新たな驟雨に抗してふたたび身につけなければならないのだ。寒さ、雨に加えて、地面からたち上り、膚にぴったりとはりついてくるような霧もある。
  (『ナチ強制・絶滅収容所』p.215)

この収容所には少なからぬ数の子供たちもいた。ごく幼い頃に収容された子供たちは、収容所の外の世界を覚えていないので、周囲の大人がおとぎ話をしてあげても内容を理解できなかったという。SSのいない世界で王子様とお姫様が暮らしていることなど想像できなかったのだ。

■展示室

風を避けて展示室に入った。かつて牢獄として使われていた建物。現在、内部は各国のメモリアルスペースが設けられている。ヨーロッパ中から女性たちが集められたことをあらためて実感した。

 

展示室内で使われているかわいらしい木の椅子は、収容所内で女囚たちによって作られ実際に使われていた椅子を再現したものであるとのこと。

各国展示スペース



犬をつなぐための鎖
SSはしばしば囚人たちに犬をけしかけた



■クレマトリウム


展示室のすぐ裏に小規模なクレマトリウムが残っている。隣接する形でガス室も設けられていたそうだが、SSによって破壊されたため、現物は残っていない。


クレマトリウムとSS詰所の間にある狭い通路。
ここで銃殺刑が行われたという伝説が一般に知られているが、真実ではないそうだ。



■埋葬地

 

収容所で亡くなった人たちの遺灰はここに埋められた。現在、国ごとに慰霊碑が建てられ、花が捧げられている。
その前にはTragendeと名づけられた女性像が立っている。ふたりの女性の視線の先には湖がある。

湖に降りていくような形で階段が作られていた。ほとりには子供を抱えて嘆き悲しむ女性の像がたつ。さざなみが像の足元に静かに打ち寄せる。
湖のはるか向こうには教会の塔が見える。保養地のような牧歌的な眺めだ。本来は気持ちの良いところなのだ。――ここに収容所さえなければ。

クレマトリウムに折鶴を捧げてラーフェンスブリュックを後にした。
もと来た道を通って駅に向かう。通りかかった家の前では、初老の女性が、孫と思われる乳児を乳母車に乗せてあやしていた。平和な光景だった。

【ラーフェンスブリュック強制収容所への行き方】



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