東方への旅 >> クラクフ(1)

2009.11.20(金)

クラクフ Kraków


次に目が覚めたのは6時58分。窓から光が漏れている。ブラインドを上げてみると、すっかり夜が明けていた。
すでに通勤する人たちの姿が駅や路上に見える。ドイツに比べると道路も建物も荒れていて貧しげなのだが、それでも朝靄にけむるポーランドの国土は美しかった。
通路に出てみると、7,8人の乗客が窓にもたれて外を眺めていた。これだけの人が同じ車両に乗っていたのかと思いながら、彼らに混ざって窓際に立つ。クラクフが近づいてくる。

クラクフ駅は大都市の中央駅にしてはさびれた雰囲気で、「東側」の空気を色濃く残していた。構内にはパンやお土産を売る店がたくさん並んでいる。
その間をすり抜けて、隣のショッピングセンター「ガレリア・クラコフスカ」に直結する出口に出た。すると、こちらはまたうってかわって目にまばゆい資本主義の殿堂である。私の生まれた北関東あたりにありそうな表面積の広い建物に、色々なテナントが入っている。店の顔ぶれは没個性的だ。ZARA、MAXMARA、ESPRIT、C&A、sephora、SATURN……。マネキンが着ている服もドイツや日本で見かけるのと変わらない。

今日から二日間お世話になるHotel andel'sは駅の目の前にあった。
2007年オープンのデザイナーズホテルで、どこもかしこもぴかぴか、従業員も若くきびきびしている。宿泊料は日本円にして1万円もしないのだが、物価が日本の三分の一であることを考えると高級ホテルの部類だろう。
受付の若い女性の態度も誇らしげで、「いらっしゃいませ、マダーム」「申し訳ございませんマダーム、チェックインのお時間になっておりませんので、まだお部屋はお使いいただけません」「マダーム、よろしければお荷物だけお預かりいたしますが」と、やたら「マダーム」を連発しながら流暢な英語で対応してくれる。
お言葉に甘えて大きな荷物を預かってもらい、ガイドブックとカメラと貴重品だけを持って町に出た。
まずは公園の中にあるインフォメーションに立ち寄り、オシフィエンチム行きの電車とバスの時刻表をもらう。さらに通りすがりのKANTORで手持ちのユーロをズウォティに両替し、これでクラクフ観光の準備は整った。

※この時両替したのは50ユーロ、当時のレートで日本円にして7000円程度だが、結果として二日間の観光にはこれで十分だった。ちなみにポーランドの両替事情はとても良い。これまで旅行した国々では、町中の両替商は銀行に比べてレートが落ちるのが常識だったが、ポーランドではまったく逆。町中の両替商(KANTOR)は怪しげに見えてもれっきとした公認の両替商なのだ。クラクフなどの観光地では銀行より店舗数が多いのもありがたい。

■クラクフ旧市街

バルバカン(左)とフロリアンスカ門

旧市街の入り口にある円形の建造物が、15世紀に建造されたバルバカン。バルバカンは固有名詞ではなく砦をあらわす普通名詞のようだ。バルバカンを過ぎると今度は13世紀建造のフロリアンスカ門が現れた。
これをくぐり、中央市場広場方面に歩いていくと、正面に聖マリア教会の塔がいくぶんかすんで見える。やがて塔の上から物悲しいラッパの音が響いてきた。いやがおうにも旅愁をかきたてる音色である。

中央市場広場には花を売る店やお土産物屋が出ていた。虫入りの琥珀が欲しい気がするが、見る目がないので変なものをつかまされたらと思うと手が出せない。
織物会館(同名の施設が私の故郷の町にあり、どうしてもそちらを連想してしまう)は残念ながら外壁の修復中。中に入るとやはりお土産屋のショッピングモールみたいになっていて、木彫りのユダヤ人人形やチェス盤が所狭しと並んでいる。


中央市場広場(右手が聖マリア教会)




ヴォイツェフ教会

広場の中途半端な位置に所在なさげに建っているヴォイツェフ教会を見学し(ミサの最中だったので覗いただけ)、グロツカ通りを南下する。道沿いにあった聖ペテロ聖パウロ教会にふらりと入る。門の前の貼り紙によると、毎週金曜、土曜の20時からクラシックのコンサートを行っているそうだ。今日のプログラムはショパンとモーツァルト。古典派以後に興味がない私にはあまりそそられないプログラムだが、余力があったら聴きに来ようと思う。


聖ペテロ聖パウロ教会

ヴァヴェル城方面に向かった歩き出そうとしたとき、聖マリア教会の内部を見ていなかったことに気がついた。旅行好きで中東欧に詳しい友人が「今まで見た中で一番好みの内装だ」と言っていたことを思いだし、来た道を引き返す。

聖マリア教会の入り口には「FOR PRAYERS ONLY」とありカメラダメマークがあった。半身だけ入って様子を伺ってみると、みんな思いっきりお祈りをしていて、カメラを提げた仏教徒の私は見るからに場違いである。結局、入り口から中を覗いただけで、早々に退散したのだが、青を基調とした内壁の美しさはちらりと確認できた。


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