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マドリッド Madrid

■ソフィア王妃芸術センター Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía

公式サイト

緊張しながら地下鉄を乗り継いで地下鉄アトーチャ駅へ。地下鉄のホームは明るく、車両も新しくてきれい。スリの活躍する車内よりも強盗がひそんでいそうな連絡通路や階段のほうが怖いので、駅に到着するやいなやゴキブリのようにすばやく地上に出る。
タクシーの中からプラド美術館やRENFEのアトーチャ駅(昨年3月11日にテロがあった所)が見えたが、今ひとつ位置関係が分からない。ソフィア王妃芸術センターはどこだ?
周囲を見回すと、通りからやや引っこんだ所に見覚えのあるエレベーターを備えた建物を発見。ふたたびゴキブリのごとくササササと移動し、入場する。びびりすぎのような気もするが、観光施設の出入り口附近にもドロボウさんは多いので油断は禁物なのだ。

ソフィア王妃芸術センターでは20世紀美術を中心に展示している。目玉はピカソの『ゲル二カ』、というか、そもそも『ゲル二カ』を展示するためにこの美術館がオープンしたようなもの。
スペイン市民戦争のさなかの1937年、フランコと協力関係にあったヒトラーは、バスク地方の小都市ゲルニカを無差別爆撃する。当時パリにいたピカソは新聞でこの事件を知って憤激し、わずか一ヶ月たらずでこの大作『ゲルニカ』を完成させたのだった。

おそらく多くの人にとってそうであるように、私がはじめてピカソの名を知ったきっかけも『ゲルニカ』だった。
個人的に残念なのは、そのために「社会派」の画家とは言いがたいピカソにある種の先入観を抱いてしまったことだ。そして、この先入観を払拭するのには長い時間がかかった。ピカソは生涯にわたって変容を続けた画家だが、中でも『ゲルニカ』が例外的な作品であることは、今ならよく分かる。
ピカソは祖国に強い愛着と誇りを持っていたと思う。しかし、スペインに真の自由が訪れるまではと『ゲルニカ』と自身の帰郷を拒み、結局再び故郷の土を踏むことのないまま1973年に92歳で亡くなった。フランコが死去するのはそのわずか二年後のことである。

『ゲルニカ』は長い間ニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されていたが、ピカソ生誕100年目にあたる1981年にスペインに返還された。
ゲルニカのそばには、愛人ドラ・マールによって撮影されたゲルニカ制作風景の写真も展示されている。私にはこれらの写真のほうが、すでに見慣れたつもりになっている『ゲルニカ』そのものよりも興味深く思えた。これを見ると、下絵と完成図がだいぶ違っているのが分かる。

一万点もの絵画を所蔵しているので、じっくり鑑賞していると切りがない。サクサク見ていく。
ミロは相変わらず(というのも変だが)ポップ。ダリは、まあ分かりやすく難解。ブニュエル部屋では『アンダルシアの犬』が上映されていた。

ひととおり展示を見たあと、土産物屋を物色する。
ゲルニカマグカップなども売られていたが、ティータイムにゲルニカを眺めながらお茶を楽しみたいか?と自問した時、私の答えは「否」であった。
ここで私の心を捕えるすばらしいグッズに出会った。パブロ君である。


パブロ君

実は出発直前、妹が大学院に合格したとの知らせを受けていた。
彼女の専攻は美術史、しかもピカソ(予定)。パブロ君は土産兼合格祝いに最適ではないか。30ユーロと結構なお値段がしたが(たぶんほとんどが作品使用料)、「日本では手に入らないだろう」という思いに突き動かされてお買い上げ。
さて、パブロ君を抱えてるんるんと店を出ようとした時、あるものに目が釘付けになった。
それは……お弁当消しゴム。
「イワコー」という正真正銘日本のメーカーのもので、パッケージには思いっきり日本語で「お弁当けしごむ」と書いてある。(イワコーの公式サイト。お弁当けしごむの画像アリ)
お弁当消しゴムがアートグッズとして扱われることに日本人たる私は誇りを持つべきであろうか。いやそもそも白米に梅干しの美学は欧米人には分かるまい。などと軽く恐慌を来たしながらプラド美術館へ。

■プラド美術館 Museo Nacional del Prado

公式サイト

入り口でもらったパンフレットには館内の地図が掲載されており、時代や地域別に色分けされている。しかし「1100-1850年のスペイン絵画」って範囲広すぎやしませんか。
頼りにならないこのパンフレットを頼りに、まずは自分内優先度No.1のスペインおよびフランドルの宗教絵画から見に行くことにした。
ボッシュ『快楽の園』を中心に、フアン・デ・フランデス『ラザロの復活』、フアン・ビセンテ・マシップ『聖アグネスの殉教』、ファン・デル・ウェイデン『十字架降架』、ヤン・ファン・アイク『ユダヤ教会に対するキリスト教会の勝利と恩寵の泉』、ヨアヒム・パティニールとクエンティン・マサイスの『聖アントワーヌの誘惑』、ああああ、やっぱり宗教絵画はいいなあ。ヨダレを垂らさんばかり。


Las tentaciones de San Antonio
Joachim Patinir, Quintin Massys

聖アントニウスの誘惑
ヨアヒム・パティニール、クエンティン・マサイス

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La fuente de la Gracia y triunfo de la iglesia sobre la sinagoga
Jan van Eyck

ユダヤ教会に対するキリスト教会の勝利と恩寵の泉
ヤン・ファン・アイク

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王家の人々の肖像画は、カトリック両王のものが若干ある以外はハプスブルク朝以降の作品ばかりだった。プラド美術館自体がハプスブルク家のコレクションを母体としてできたから当然なのかもしれないが、ではそれ以前のものはどこに所蔵されているんだろう。
肖像画の中でひときわ目立つのは、やはりティツィアーノによるカルロス1世とその妻の絵。美貌と優雅さを謳われたイサベル皇后の肖像は、いざ実物を見ると顔が白塗りのお面のようでちょっと怖い。

Isabel de Portugal(1548)
Tiziano Vecellio

イサベル・デ・ポルトガル
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

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階段を利用して二階へ上がる。
ゴヤが腐るほどある。はっきり言ってありがたみゼロ。自分がもともとゴヤをあまり好きでないからそう思うのかもしれないが。しかし『カルロス4世の家族』はまったくすごい。一歩間違えれば戯画だが、ぎりぎりの線で踏みとどまっている。何度も本で見たことがあったのに、しばらく絵の前に陣取ってしまった。
とはいえ、真打ちベラスケスの前には『カルロス4世〜』すらも霞んでしまう。この人は本当に格が違うと思う。素人が見てもわかる「違い」である。
小品ながらはっと足を止めさせる絵があり、作者を見たらベラスケス、ということが何度かあった。


Las Meninas(1656)
Diego Velazquez


ラス・メニーナス(女官たち)
ディエゴ・ベラスケス

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半分道に迷いながら館内をぐるぐるまわって、なんとか全ての部屋を踏破した(はず)。嫌いなロココや印象派は軽く眺めるに留めた。
プラドはイギリスの大英博物館、フランスのルーヴル美術館、イタリアのウフィツィ美術館と並び称される大美術館であるが、ギリシャやエジプトからの分捕り美術が少ないせいか、ルーヴルに比べると規模の上では劣るような印象を受けた(大英博物館とウフィツィには行ったことがないので比べられない)。まあ、私は親仏家なので…。

■ティッセン・ボルネミッサ美術館 Museo de Thyssen Bornemisza

公式サイト

最後はティッセン・ボルネミッサ美術館。パセオ・デル・プラドを挟んでプラド美術館の向かいにある。ティッセン・ボルネミッサ男爵夫妻のコレクションを元にした個人美術館(!)。
ソフィア王妃芸術センター、プラド美術館と見た後では見劣りがすることは否めないが、なんにせよ個人でここまで蒐集した男爵はすごい。ここんちの子になりたいよ。
カラヴァッジョの『アレクサンドリアの聖カタリナ』が良かった。やはりカラヴァッジョの絵はドラマティックで人目を引く。


Santa Catalina de Alejandría(1598)
Caravaggio

アレクサンドリアの聖カタリナ
カラヴァッジョ

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イサベル1世の宮廷画家だったフアン・デ・フランデスによる『王女の肖像』。イサベル女王の四人の王女たちのうち、二女フアナを描いたものと考えられてきたが、近年では末娘カタリーナ(キャサリン・オブ・アラゴン)とする説が有力だという。隣には、彼女の二度目の夫となる英国王ヘンリー8世の肖像画(ホルバイン画)が展示されていた。


Retrato de una infanta(1496)
Juan de Flandes

王女の肖像
フアン・デ・フランデス

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時間があれば、ホテルの近くのエンカルナシオン修道院やデスカルサス・レアレス修道院にも行ってみたかったのだが、やっぱり無理だった。次の機会に期待しよう。
とはいえ外はまだ明るい。
エル・コルテ・イングレス(スペインの大手スーパー)に水などを調達に行く道すがら、デスカルサス・レアレス修道院の前を通ってみた。カルロス1世の娘フアナが設立した女子修道院で、内部にはすばらしい美術品の数々が所蔵されているという。
門扉をかたく閉ざしているせいか、堅牢な石の壁はいっそうものものしい雰囲気だった。

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