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2003.9.21(日)

一日め

■青森

台風から逃れるように北へ。
東京で降っていた横殴りの雨は福島に入る頃には消え、八戸から急行に乗り替えてやっと青森にたどり着いたとき、外は暑いくらいの陽気だった。
ここから電車に乗り継いで宿泊地である五所川原に向かうつもりである。
しかし、i-mode(←便利)で調べるとなんと3時間半もかかるという。途中駅川部で乗り継ぎ電車の到着を135分も待たねばならないらしい。
それはちょっと、ということで、他のルートがないかガイドブックを確認。するとビンゴ! 青森−五所川原間の直通バスが出ているではないか。
いつもながら足の無い旅。限られた公共の交通機関を最大限に利用して、無駄のない動きをするためには、臨機応変が肝心、それは3度のフランス行きで身にしみている。今回は国内旅行で、言葉が通じるだけ楽というものだ。
というわけで、観光案内所へGO。窓口のおねえさんに教えてもらった駅前の弘南バス乗り場で待つこと5分。思いの外早く五所川原行きのバスはやってきた。

バスは市街地を抜けて、やがて山間の道に入る。
東京に接近中の台風が夢だったかと思われるような、のどかな秋晴れである。家庭菜園の世話をする老夫婦や、バドミントンで遊ぶ若者の姿。窓に纏わり付くように赤蜻蛉の群れが飛ぶ。
道路脇に「津島恭一」という政治家のポスターが見えた。太宰の本名と同じ津島姓だ。津島一族には政界で活躍している人も多いから、津島恭一氏も太宰の血縁者かもしれない。

※後になって、太宰の次兄英治さんのお孫さんであることが判明。この旅行当時は自民党所属の衆議院議員でしたが、05年郵政民営化法案に反対票を投じ離党。その後、国民新党に参加。公色サイト

「梵珠山」と書かれた看板を目にする。
梵珠山は釈迦の墓があると伝えられ、ながらく地域住民の信仰の対象とされてきた霊山だが、太宰ファンなら即座に『魚服記』を思い出すだろう。「ぼんじゅ山脈」を舞台に、大人へと成長していく過程で父に犯され、滝に身を躍らせて鮒に変身する少女スワを描いた掌編である。
どの山が梵珠山なのかは分からなかったが、おそらくそこに連なる丘陵の一つを走行中であるらしいと見当を付けた。

地元のおばあちゃん二人組が乗ってきた。さかんにおしゃべりをしているのだが、言葉がまったくわからない。
「国内旅行なら言葉も通じるし」という安心感は脆くも崩れ去る。道を聞くときは若い人にしようと思う。

■五所川原

二時間ほど走ると風景が都会めいてきた。五所川原市に入ったのだ。

岩木川に沿うて五所川原という町がある。…(略)…善く言えば、活気のある町であり、悪く言えば、さわがしい町である。農村の匂いはなく、都会特有の、あの孤独の戦慄がこれくらいの小さな町にも既に幽かに忍びいっている模様である。(『津軽』新潮文庫p.5)

津軽半島を回る際の玄関口となるのがこの五所川原市。
駅前はアーケード(というより「コモヒ」かもしれない。新潟では雁木と呼ばれる雪除け)が続く商店街になっているが、日曜のためか、殆どの店はシャッターが閉まっていた。太宰は子供の頃このへんを歩いていてドブに落ちたらしい。
終点の五所川原駅前でバスを降りた。
駅からほど近いホテルサンルート五所川原にチェックイン。窓からは岩木山が綺麗に見えた。

しばし休んだ後、夕飯を食べられる場所探しを兼ねて五所川原探検に出かける。
五所川原には太宰の母代わりだった叔母・きゑが住んでいた。叔母の家のある場所はかつて「ハイカラ町」と呼ばれたところで、「今は大町とかなんとか、別な名前のようである」と太宰は書いている。
大町は容易にみつかったが、しかしきゑさんの具体的な自宅の場所について私は知らない。
夕闇せまる五所川原駅前はコモヒのためにいっそう薄暗く、人通りもまばらな商店街に、商店街放送の声だけが大音量で響いている。さびしい風景である。
と、そのとき「ハイカラ町の○○セール…」というアナウンスが耳に飛び込んできた。
今でもハイカラ町と言うのだ。なんだか嬉しくなる。
その大町付近に、政治家・津島雄二氏の後援会の看板を見つけた。太宰の長女・津島園子さんの夫で、森内閣では厚生大臣を務めた人だ。
写真を撮りたかったが、不審者と思われそうなので踏みとどまった。というか、意味もなくこんなところをウロついている私ってすでに十分怪しい人のような気が…。

夕飯を食べられそうな場所をさがしたが、どこもかしこも休業中なので、諦めてホテルのレストランで食べることにする。
帰りにコンビニで酒とつまみを買って帰った。大河ドラマ「武蔵」の巌流島を見ながらひとりで呑もうという魂胆である。おっさんである。しかも武蔵を見るのはこれが初めてだ。小次郎役松岡昌宏のポニーテールを確認後、就寝。

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