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2004.9.27(月)

ブルージュ Brugge

13:32の電車に乗ってブルージュへ。ゲントから30分ほどで到着。
ブルージュの駅は古くもなければ新しくもない、素っ気ないような建物だった。周囲は開けていて、大きな道路が走っている。旧市街の方角に教会の塔が見えたので、それを目指して歩いていく。
宿泊予定のホテルPortinariのあるザンド広場は、旧市街と駅の中間あたり。地図を見ると一本道……のはずなのだが、歩けど歩けど広場が見えてこない。
石畳の道でスーツケースをひきずって歩くのは骨が折れる。段差も多く、スーツケースをひきずる手に振動がじかに伝わってくる。疲れるし、キャスターが壊れるのではないかと気が気でない。
道の両側には、白い煉瓦にオレンジ色の屋根を乗せた背の低い家が延々と続いている。小さな戸もレースのカーテンの下がった窓もかたく閉ざされて人っ子ひとりいない。
地図を取り出すために立ち止まると、それまでスーツケースがたてていた轟音がぴたりとやんで、たちまちあたりは静寂で満たされた。
通行人がいれば道を聞けるのだが。途方に暮れて周囲を見回すと、上方の壁から古ぼけた聖母マリアの像が見下ろしていた。

あらゆる町角にある板張りやガラスの厨子のなかには、ビロードのマントをまとった聖母マリアが安置されている。聖母は色あせた紙の花々につつまれ、手には聖句をくりひろげる吹き流しを持ち、みずからこうのべている、「われは無垢なる聖処女」と。
ジョルジュ・ローデンバック『死都ブリュージュ』(p.56)

ローデンバックの文章がふいに頭にひらめき、ああ、これが死の都か、と実感した。
そのとき、聖母のいる壁の向こうに、ちらりと近代的な建築物が見えた。大部分は隠れているが、かなり大きい建物のようだ。手元の地図を見る。あれはもしや、ザンド広場の劇場ではないか?
見え隠れする建物を目指して歩いていくと視界が開け、きれいに整備された広場に出た。観光客や地元の人がたくさん歩いている。
どうやら私はわざわざ裏通りを選んでしまったものらしい。

なんとか無事ホテルにチェックインした。今回の旅行で唯一★★★★のホテル。鍵と一緒に美術館などの入場料が割り引きになるカードをくれた。
案内された部屋は広場にこそ面してはいなかったけれど、そのかわり窓からは聖母教会と救世主大聖堂の塔が見える。
荷物を置いて、「死都」散策に出かけた。

■マルクト広場 Markt

にぎやかな広場。観光客がたくさん。というか私がそのひとりなのだが。
河岸には人がわらわらとむらがっていて、裏通りの静寂がうそのようだ。ボートに乗ったりして笑い興じる人々の姿を見ていると、他愛なくも楽しくなってくる。
広場の中央に立つのは、1302年のブルージュ蜂起の際に市民軍を率いてフランス王を敗退させた英雄、ヤン・ブレーデルとピーテル・ド・コーニングの像。


ボートに鈴なりの人々


■ファン・アイク広場 Jan van Eyckplein


『死都ブリュージュ』収載の図版ととほぼ同じアングルで写真を撮ってみた。
ヤン・ファン・アイク像の背後に見える赤茶色の建物は、ロードステーン(赤い石)と呼ばれているそうだ。

■ポールテルス・ロッジ Poortersloge

ヤン・ファン・アイク像のほぼ正面に建つこの建物は、かつてブルージュ市民たちの集会所として使われていたもの。現在は古文書館になっている。
壁龕にはブルージュの紋章にも登場する熊の姿がある。11世紀、ボードウェイン伯が城塞を築くためにこの地に足を踏み入れた時、最初に出会った生き物が熊だった、という故事によるものだとか。
時々衣装が替わるらしく、この日はピエロのような服を着ていた。

この辺りでは人影もまばらだった。
メインストリートをはずれると、古い路地が迷路のように入り組んでいて、一本道ですら迷う私にはとうてい覚えられない。何度も方角を見失い、ベフロワ(鐘楼)を目印に方向転換をする。
月曜なので美術館などは大抵休み。かろうじて開いていた教会を中心に見学する。


グルートゥーズ美術館の庭


船着き場

■救世主大聖堂 St.Salvatorskathedraal

かなり無骨な外観で正直あまり美しいとは思えないのだが、聖母教会やベフロワなどとセットで遠景で見ると趣がある、ような気がする。内部には壮麗なパイプオルガンがある。
フィリップ善良公が創設した金羊毛騎士団の集会もここで開かれたという。

■聖血礼拝堂 H.Bloedbasiliek


聖血礼拝堂内部(二階部分)


ブルグ広場に面して建つ聖血礼拝堂はゴシック様式の上部とロマネスク様式の下部、二重構造の礼拝堂。
フランドル伯ティエリー・ダルザスがコンスタンティノープルから持ち帰った聖血(キリストの血)を安置する。
入り口中央にマリー・ド・ブルゴーニュの金色の像がある。中に入るとひんやりして暗い。階段を上がっていくと石作りの礼拝堂に出る。
薄暗い中に色とりどりの装飾がぼんやり浮かんで見える。
『死都ブリュージュ』のクライマックス、聖血の行列はここから出発するのだ。

マリー・ド・ブルゴーニュとシャルル突進公の墓がある聖母教会は時間切れで見学できなかった。明日に回すこととしよう。

小腹が空いたので、ザンド広場でワッフルを食べた。日本でも流通しているリエージュ風のワッフルではなく、ブリュッセル風のふわふわしたワッフル。私はこちらのほうが好み。

日が暮れてからの眺めはすばらしかった。電気を消してしばしその夜景を堪能したあと、ベッドに入り、目を閉じる。
そのとき。

ぷ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
という、蚊の鳴くような声が……。
「ような」じゃない、これはまさしく蚊だ!
横になったまま息を潜め、耳をすます。近寄ってきたところを叩く! が、どうしてもとらえられない。諦めて横になると、またどこからか羽音が。

ねぶたしと思ひて臥したるに、蚊のほそ声に、わびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風さへその身のほどにあるこそ、いとにくけれ(怒)。

10月も近いと思って油断していた。運河の多い街なので、蚊が多いのだ。
結局奴を捕らえることはできず、不安に思いながら就寝。


救世主大聖堂(左)と聖母教会
ホテルの部屋からの眺め



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